2018年3月15日~18日,福岡で第43回日本脳卒中学会学術集会が催されました。
会場では,急性期脳梗塞に対する血栓回収療法の発表演題が多く見受けられ,脳梗塞の治療法は着々と進歩している印象を受けました。
血栓回収療法は,閉塞血管を再開通させることで,症状の劇的な改善が得られます。脳梗塞の範囲を最小限に食い止めることで,後遺障害の軽症化も期待できます。まさに,夢のような治療法ですが,血栓回収療法を行うには,「適応の条件」に注意が必要です。
そこで今回は,血栓回収療法の「適応の条件」について解説します。
2015年4月,日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本脳神経血管内治療学会が合同で,「経皮経管的脳血栓回収用機器 適正使用指針 第2版」(以下「適正使用指針」といいます)を発表しました。
この適正使用指針は,現在,インターネットで自由に閲覧できます。
脳卒中の治療担当医は,普段から適正使用指針をよく理解した上で,目の前の患者さんが,血栓回収療法の適応例か否かを判断しなければなりません。
適正使用指針には,「留意点」として,次の一文が記載されています。
「rt-PA 静注療法の適応例に対してはそれを優先すること。」
非常に重要な一文なので,敢えて取り上げました。
たしかに,rt-PA静注療法の有効性,すなわち早期再開通率は,決して高いとはいえません。むしろ,内頚動脈や中大脳動脈近位部の閉塞例では,再開通率の低さが指摘されています。そのため,血栓回収療法を第一選択としたほうが,患者の利益に資する可能性も完全には否定できません。
しかし,適正使用指針では,次のように述べています。
「科学的根拠の蓄積に基づき、発症 4.5 時間以内に治療可能な虚血性脳血管障害患者のうち、禁忌項目を有しない適応患者に対して rt-PA 静注療法を行うことが強く推奨されている。日本脳卒中学会の策定した rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法適正治療指針第 2 版に基づき、適応患者を慎重に選択してrt-PA 静注療法を実施すべきであり、その適応患者に対し rt-PA 静注療法を行なわずに本療法を実施することは厳に慎まねばならない。」
したがって,現在の医療水準においては,rt-PA静注療法を第一選択とすべきなのです。
血栓回収療法の治療適応に関する2つ目の重要な点は,
「治療適応は、個別の医療機器の薬事承認条件に基づくこと。」
とされていることです。
つまり,医療機器ごとに治療適応が定められているため,治療担当医には,個々の症例に応じた医療機器の選択が求められます。
血栓回収療法の適応を判断できるのは,血栓回収療法で使用する医療機器を熟知している医師なのです。
以上が,血栓回収療法の適応に関する最重要点だといえます。