認知症診療の新時代へ:アイトラッキング技術搭載の神経心理検査プログラム『ミレボ®』が保険適用で登場
- 医療鑑定研究会 中嶋浩二
- 2月3日
- 読了時間: 3分
更新日:3月7日

大塚製薬株式会社と株式会社アイ・ブレインサイエンスは、認知症診療支援を目的とした神経心理検査用プログラム「ミレボ®」が、2025年1月1日付で保険適用を取得し、販売を開始したことを発表しました。
これは、認知症領域のSaMD(Software as a Medical Device)として日本初の快挙です。
「ミレボ®」の特徴と利便性
「ミレボ®」は、アイトラッキング技術を活用した革新的な神経心理検査用プログラムです。
タブレット端末(13インチiPadAir(M2)、12.9インチiPad Pro(第6世代))に専用アプリをインストールするだけで、約3分という短時間で簡便かつ客観的な検査結果を得ることができます。
被検者が画面上の質問に対し正解箇所を見つめるだけでデータが自動スコア化される仕組みとなっており、検査者の知識や経験に依存せず、定量的かつ客観的な評価が可能です。
原則として、3月に1回限り、保険診療で実施できます。
背景と社会的意義
2022年時点で、日本国内の認知症および軽度認知障害(MCI)の推定患者数は1,000万人以上に達しています。
このような状況下で、2024年1月には「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行され、認知症の早期発見・診断・対応がますます重要視されているのが現状です。
「ミレボ®」はこうした社会的ニーズに応える新たな選択肢として、認知症の早期発見と診断精度向上に貢献することが期待されているといえます。
臨床試験による有効性の裏付け
「ミレボ®」は臨床試験においてもその有効性が確認されています。
主要評価項目では、「ミレボ®による検査スコア」とMMSE(Mini-Mental State Examination)総合点との高い相関性が認められました。
添付文書によれば、認知症と診断された人、軽度認知障害が疑われる人、及び健常者の計73名の被験者に対し、ミニメンタルステート検査(MMSE)による認知機能検査を実施した後、「ミレボ®」による検査を実施した結果、両者のSpearmanの順位相関係数は0.831と強い相関が確認されています。
また、副次評価項目として、MMSEと比較して検査者の負担軽減効果も確認されています。
安全性に関しては、「ミレボ®」による検査中1例の「頚部痛」(1.3%)の有害事象が発現したものの、重症度は軽度であり、処置を必要とせず速やかに回復したと報告されています。
不具合は「ミレボ®」による検査中に「画面のちらつき」と「画面フリーズ」の2件(2.6%)発生したが、一過性又はプログラムの再起動により解消したとされ、医療現場での実用性も高いと考えられます。
政策との連携と未来への期待
2024年12月に閣議決定された「認知症施策推進基本計画(案)」では、「新たな知見や技術の活用」が重点目標として掲げられています。「ミレボ®」はアイトラッキング技術という先進的な手法を採用することで、神経心理検査の選択肢を広げるだけでなく、日本全体の認知症対策にも大きく寄与することが期待されています。
今回の発表は、医療技術とデジタル技術の融合による新たな可能性を示すものであり、今後「ミレボ®」が医療現場や患者、その家族にとって重要なツールとなりそうです。
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