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執筆者の写真医療鑑定研究会 中嶋浩二

COVID-19に合併する脳梗塞の特徴

(2020.10.5)

今回は,2020年7月号のStroke誌に掲載された次の論文を紹介します。

Yaghi S, Ishida K, Torres J, et al: SARS-CoV-2 and Stroke in a New York Healthcare System. Stroke 2020; 51: 2002-2011.(PMID 32716821)

COVID-19の合併症として,脳梗塞の危険性が指摘されています。

しかし,わが国からの報告では,その実態が明らかとなっていません。

この論文は,世界で最もCOVID-19感染者が多い米国からの報告です。

内容の要点は次のとおりです。

・ニューヨークの医療機関で入院治療を受けたCOVID-19患者3,556例のうち,0.9% (32例) で脳梗塞の合併を認め,転帰は24例 (75%) で死亡または重篤な状態という結果であった。

・COVID-19に脳梗塞を合併した群では,脳梗塞の病型として潜因性脳梗塞が65.6%を占め,一般的な潜因性脳梗塞の頻度と比較して,かなり高値であった。

・COVID-19に脳梗塞を合併した群では,血中D-dimer値のピークが異常に高かった。つまり,全身性の過凝固状態が脳梗塞の原因となった可能性がある。

・D-dimer値の上昇が軽度から中等度のCOVID-19患者に対し,予防的に抗凝固療法を行うことについては,安全性と効果を検証する研究が進んでいる。

論文のなかでは,COVID-19に脳梗塞を合併した32例について,年齢,COVID-19の症状,COVID-19発症から脳梗塞合併までの期間,血液検査結果の特徴,脳梗塞病型,治療,転帰の一覧が掲載されています。

私と同じ40歳代の患者が7例含まれ,そのうち2例は高血圧や糖尿病といった既往症もなかったようですが,いずれの例も死亡しています。2例に共通していたのは,血液検査で,CRPという炎症反応を表す数値が100を超え,D-dimer値も10,000を超えていたということです。非常に激しい全身性の炎症と,著しい過凝固状態に陥っていたことがわかります。

この論文では,脳梗塞を画像検査で確認できた例を対象としています。著者らも指摘しているように,COVID-19の重篤な例では,画像検査の実施が困難で,脳梗塞を発症しても,診断を受けずに見過ごされている場合があると予想されます。

今回報告された32例のうち,6例は危機的な状況から回復して,リハビリテーションのために転院し,1例は自宅退院となっています。

COVID-19の重症例では,脳梗塞の合併を疑い,迅速な診断および治療(抗凝固療法)が望ましいといえそうです。


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