TIA:脳梗塞の前ぶれ発作として知っておくべきこと
- 医療鑑定研究会 中嶋浩二
- 2023年2月24日
- 読了時間: 3分
更新日:3月7日
医療鑑定研究会・代表医師の中嶋です。
今回は【TAI:脳梗塞の前ぶれ発作として知っておくべきこと】というテーマで、最新の知見も踏まえつつ解説します。

■ TIAとは?
一過性脳虚血発作(TIA)は、脳血管系の一時的な血流障害によって起こる神経学的症状の発作です。
これは、短時間(通常は数分から1時間以内)に発生する症状であり、多くの場合、脳梗塞の前ぶれとなります。
脳梗塞は、脳の血管が完全に閉塞された場合に起こりますが、TIAは通常、短時間の血流障害によるもので、自然に改善する場合もあります。
■ TIA後の脳梗塞発症リスクの予測因子
TIAを評価する方法としては、ABCD2スコアが一般的に使用されます。
このスコアは、TIAの症状、年齢、血圧、糖尿病の有無、および前回のTIAまたは脳梗塞の既往歴に基づいて計算されます。
スコアが高いほど、TIAから脳梗塞に進行するリスクが高いとされています。
21か国、4,789例を対象とした大規模な国際共同前向き研究(N Engl J Med 2016; 374: 1533-1542)では、このスコアが6~7点の場合に脳梗塞を含む脳卒中発症リスクが高いと報告されています。
脳梗塞を発症するリスクは、TIAの発作から1週間以内に最も高くなります。
TIAから90日以内に脳梗塞を発症する可能性は約10%であり、1年以内に再発する可能性があるとされています。
■ TIAの診断で重要度を増すMRI
以前は、MRIで脳梗塞が確認されても、症状が24時間以内に消失すればTIAと診断されてきました。
しかし、アメリカをはじめ、WHOの国際疾病分類(ICD-11,2018年)においてもTIAは「梗塞巣」を有してはならないというのが、世界のコンセンサスとなっています。
これに伴い、2019年10月、日本脳卒中学会も、「急性梗塞の所見がないもの」という要件を定義に加えています。
■ TIA後の脳梗塞発症の予測因子
最新のわが国のデータ解析では、
・脳血管障害の既往
・1週間以内のTIAの先行
・脳主幹動脈の狭窄性病変
が独立した有意な予測因子であったと報告されています。
スペインで1,137例のTIA患者を対象とした報告でも、TIAの先行、脳主幹動脈の狭窄性病変が、TIA後7日以内の脳卒中発症の予測因子として指摘されています。
■ TIAの意外な新事実
わが国のTIA症例2,742例を対象とした研究では、「TIAの症状持続時間と脳梗塞発症とのあいだに有意な関連性はみられなかった」と報告されています。
これまでは、TIAの症状持続時間が長ければ、その後、脳梗塞へ進行するリスクが高い、すなわち、症状持続時間はTIA後の脳梗塞リスクの予測因子と考えられてきました。
ABCD2スコアの項目にも、症状持続時間が含まれています。
この新たな知見については、今後、さらなる検討が必要といえます。
■ TIAの治療
TIAの治療には、抗血小板薬が一般的に使用されます。
これには、アスピリン、クロピドグレルなどが含まれます。
これらの薬物により、TIAから脳梗塞に進行するリスクを減らすことができます。
高リスクのTIA患者には、早期治療が必要であることが示され、早期治療により、TIAから脳梗塞に進行するリスクを減らすことができます。
したがって、TIAの症状がある場合は、すぐに医師に相談することが重要です。
【参考文献】
脳卒中データバンク2021,中山書店
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