(2019.4.11)
代表医師の中嶋です。
本日は,前回紹介したDAWN trialと類似の,脳梗塞発症から6時間以上経過した血栓回収療法の有効性について,New England Journal of Medicineから2018年に発表された医学論文論文を紹介します。
掲載雑誌:New England Journal of Medicine (impact factor:79.258 ⇒ 非常に影響度の大きい雑誌です)
タイトル: Thrombectomy for Stroke at 6 to 16 Hours with Selection by Perfusion Imaging.
著者:Albers GW, Marks MP, Kemp S, 他
掲載号数・ページ: 2018; 378 (78) : 708-718
論文内容:DEFUSE 3についての報告。
(DEFUSE 3 trial = The Endovascular Therapy Following Imaging Evaluation for Ischemic Stroke)
内容:近位部中大脳動脈または内頚動脈の閉塞例で、最終健在確認から6~16時間経過して、脳梗塞のボリュームが70 mL未満で,低灌流領域と虚血コアのボリューム比が1.8以上の例を対象としたとき、発症90日における予後良好例(mRS 0-2)は、血栓回収療法を実施した例で45%,実施しなかった例で17%と血栓回収療法実施例で有意に優れていた。
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(解説)
まず,「Mismatch volume」,「Mismatch ratio」,「RAPID」について解説します。
RAPIDというソフトは,正常組織と比較して脳血流が30%未満に低下した低灌流領域(=まだ梗塞ではない)と,虚血コア(=梗塞)のボリュームを計測し,低灌流領域のボリュームから虚血コアのボリュームを引いたボリュームがMismatch volume,低灌流領域のボリューム/虚血コアのボリュームで導出される値がMismatch ratioです。
今回のDEFUSE-3 trialでは,前回ご紹介したDAWN trialと比較して,幅広い患者さんを対象としています。DEFUSE-3 trialの患者の約40%は,DAWN trialの患者選択基準を満たしていないとされています。
本研究によって,最終健在確認時刻から6時間以上経過していても,低灌流領域と虚血コアのボリュームにミスマッチが存在すれば,血栓回収療法によって良好な機能予後を期待できる場合は少なくないことが判明しました。ますます初診医の責任は重くなっているといえます。
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