(2020.7.25)
代表医師の中嶋です。
今回も前回(「~明らかとなった裁判所の基本姿勢~」)に引き続き,脳外傷による高次脳機能障害に対する裁判所の基本姿勢について,お話したいと思います。
脳外傷による高次脳機能障害の事件に限らず,意見書を執筆する際は,裁判官が共感しやすい内容を常に心がけています。
そのためにも,最近の裁判例にはできる限り目を通し,裁判官の説示内容を吟味した上で,意見書に反映させています。
最近の裁判例を一覧にして眺めていたところ,改めて,次のことに気付きました。それは,自賠責の審査で「非該当」と判断された事例は,裁判でもことごとく高次脳機能障害の存在を否定されているということです。
試しに,次のような調査を実際に行ってみました。
TKCローライブラリーのLEX/DBインターネットを用い,キーワード「交通事故」「高次脳機能障害」「損害賠償請求」で検索,該当した民事裁判例を見てみると,平成30年9月26日から令和元年10月30日の約1年間に,自賠責で「非該当」と判断され,裁判で争われた10例の全例で高次脳機能障害を否定されていました(調査日2020年7月12日)。
例)・神戸地裁 令和元年10月30日判決
・大阪地裁 令和元年10月28日判決
・大阪地裁 令和元年10月2日判決
・横浜地裁 令和元年9月11日判決など
まさに,前回のブログで紹介したように,裁判所の「他に特段の事情がない限り,複数の専門家による自賠責保険審査会高次脳機能障害専門部会の判断を尊重し,そのとおりの後遺障害を認定するのが相当である」という基本姿勢が貫かれているともいえます。
そして,裁判所が高次脳機能障害の存在を否定する際に用いる理由は,ほとんど共通しています。以下に代表例を示します。
神戸地裁 平成31年2月27日判決
器質的脳損傷を画像で確認できない
意識障害が軽微である
神経心理学的検査の結果に大きな問題がない
症状の出現が事故直後からではない
復職後の生活状況に大きな問題がない
これらの理由のいくつかを組み合わせて,高次脳機能障害の存在を否定するのが典型といえます。
そこで次回は,上記の高次脳機能障害を否定する理由のなかで,最も重視されている「画像所見」について,裁判例を医学的に検討したいと思います。
(ちょっと一休み)
先日,ハンガーにかけたまま使えるアイロンを職場用に買いました。
いくつか持っている白衣のうち,1種類だけ,クリーニングに出してもシワシワなんです。
そこで,以前から気になっていた「ハンガーにかけたまま使えるアイロン」を通販で購入しました。価格は税込みでも2,000円台と格安でした。
注文からわずか2日で届いた商品を早速試してみました。本体の大きさは,350mL缶くらいです。
説明書をざっと読み,水道水を注ぎ,スイッチをONにします。
スチームの吹き出し口からスチームが出てきたら,あとはシワに近づけてゆっくりと動かすだけのようです。
なんて簡単なんだ!とワクワクしながら,水道水がアイロンのなかで沸騰するのを待ちます。そして,わずか1分くらいで,ゴボゴボゴボゴボ・・・とケトルでお湯を沸かしたときと同じ音を奏でながら,吹き出し口からスチームが出てきました。
よーし!きたきたきたきた!
早速,白衣のシワに近づけます。が,ここで緊急事態発生です。
たしかスチームが勢いよく出ていたはずなのに,いつの間にか,熱湯がそのまま噴き出しています。
ブシュッ,ブシュッ,ブシュシュシュシュー!
白衣はどんどんびしょ濡れに。まぁ,ある意味,シワは消えましたが・・・
一旦スイッチをOFFにして,再度ONにします。再び,アイロンのなかで沸騰が始まり,吹き出し口からは,少しだけスチームが出た後,熱湯が水鉄砲の如く連射されます。もはや危険な武器です。
やっぱり安いから・・・ しょんぼりしながら,一旦,スイッチを切って,それでもあきらめずに説明書を熟読します(皆さんははじめから熟読してください)。
そしたら,「故障かな?と思ったら」のページに,「ミネラルを多く含む水は使用しないでください。水道水を使用してください。」と書いてあります。うーん,たしか職場の水は井戸水ってきいたことがある。もしや・・・と思い,あえて市販のペットボトルの水を入れてみると・・・シューーーーッ!
なんとも美しいスチームが持続的に出てくるではありませんか。
シワも伸びて,きれいになった白衣を眺めつつ,自然科学の奥深さに思いを馳せた夏の朝でした。(中嶋)
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